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IOT×AIを活用した宇宙ステーションの予知保全

国際宇宙探査ロードマップにおける2020年代の目標には、月周辺の有人探査の実施、無人で月周辺に移動させた小惑星の有人探査、月周辺の長期有人滞在ミッション、月表面の有人探査などがある。

そのため、国際宇宙ステーション(ISS:International Space Station)の船外を中心に、宇宙での作業の必要性が増してきている。なお、宇宙飛行士による宇宙ステーション船外の検査・修理などのコストは、1時間あたり約500万円である。また、宇宙空間での作業としては、宇宙ステーションの検査・修理のほかにも、小型衛星の燃料補給、デブリ回収などの作業を代替する地上遠隔、基地建設ロボットなども入ってくる。そのため、今後さらにその需要は急増していく可能性が高い。

今回の記事は、このような宇宙空間での作業効率を良くするための「IOT×AIを利用した宇宙ステーションの予知保全」についてご紹介したい。その中でも、「宇宙ステーションの異常検知」と「遠隔ロボットアームによる宇宙ステーションのメンテナンス」についてご紹介していく。

宇宙ステーションの異常検知

国際宇宙ステーションにおいて、船体の部品の老朽化が深刻な問題となっている。NASAが国際宇宙ステーションの建設を始めたのは1998年であり、軌道を回り始めてからは20年以上が経ち、部品は老朽化している。

そして、今後は多くの部品が壊れ始めると危惧されている。当然ではあるが、宇宙ステーションの寿命は少しでも延長したいのである。理由としては、新たにロケットで打ち上げる頻度を減らすことができるため、コストが安くなり、その分、有益な研究にコストを割くことができるためである。さらには余分な宇宙機を打ち上げる必要がなくなることから、結果として宇宙ゴミを減らすというメリットもある。

さて、この部品の老朽化問題に対して有効な対策として、「部品の残り耐用年数(RUL:Remaining Useful Life)の予測」の開発がある。

部品の耐用年数の予測する方法としては、AIアルゴリズムにGBoost手法を利用し、NASAが公開している時系列データ、動作条件などのさまざまな組み合わせで、エンジン劣化を予知するアルゴリズムを作ることができる。
なお、NASAが公開したデータセット(PCoE Datasets)は、エンジンに付けた21個のセンサーにより計測した時系列データであり、この時系列データには正常状態から障害状態までのデータが含まれる。

以下の図は、さきほどご紹介したアルゴリズムで、エンジン劣化について実際の耐用年数と予測された残りの耐用日数をプロットした散布図であり、強い正の相関がある事が判り、予測ができていることが伺える。

遠隔ロボットアームによる宇宙ステーションのメンテナンス

宇宙探査にとって、宇宙ステーションが可能な限り長期間に使用できることは重要である。そのためにはメンテナンスが必要であり、特に軌道上での保守性が重要となる。

メンテナンスには、IOTとAIを活用することができ、宇宙ステーションの異常検知をすることが可能となる。さらには、検知した異常に対し、宇宙ステーションに搭載されたインテリジェントロボット(視覚・触覚などの機能によってある程度自己判断ができるロボット)により、故障を修理できる必要がある。

また、この技術実証を通して培った技術を使用し、軌道上でのドッキングやメンテナンス作業が可能な船外ロボットアームの開発や、月面探査が可能な船外汎用作業ロボットの開発にもつながるとされている。このような高レベルのロボット操作には、以下のような種類があるのでご紹介する。

・遠隔操作(地球から制御)
・自動操作(事前にプログラムされた制御)
・半自律操作(事前定義されたものから開始し、環境に順応し自律的に制御)
・完全自律操作(自律意思決定)

このようなロボットによるメンテナンスの具体的な予定として、国際宇宙ステーションにて運用中の2本のアームをもったロボット「デクスター(Dextre)」に、「発展型宇宙視覚システム」を新たに取り付け、デブリの衝突痕の点検に使用するなどの、宇宙ステーションのインフラ点検とメンテナンスをサポートするというものがある。

最後に

宇宙探査に使用されるIoT×AIは、100%の堅牢性が要求される。すべてのアプリケーションで、ソフトウェアが失敗することは許されない。これらの理由により、宇宙用IoT×AI(ソフトウェア含む)のアルゴリズムは解釈可能性(人間がどれだけ理解できるか)の高さが重要となる。

一方、パフォーマンスを向上させる大規模なディープニューラルネットワーク(深層学習)は、ブラックボックス形式のため、解釈可能性が低下する。そのため、宇宙探査におけるAIにおいては、古典的な機械学習アルゴリズムが、解釈性が高く、ロバスト性(頑丈性)を向上させるものとして、必要不可欠なものと考えられる。

今後、宇宙探査はさらに展開していき、惑星探査と惑星移住が進み、それに伴い、厳しい環境下における経験や発見を経て、保守的に機械を設計および操作していくと考えられる。次回は、期待が寄せられる「惑星移住」についてご紹介していきたい。ぜひご覧くださいますようお願いいたします。

 
 
 
 
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