宇宙開発と宇宙服
今回から宇宙業界に関する記事を複数回に分け載せていきたい。初回は、私が過去に宇宙飛行士への着用ロボットの研究をしていたことから、宇宙服についてご紹介したい。
まず、宇宙と人類の歴史について述べると、137億年前に宇宙が誕生し、46億年前に太陽系が誕生(地球の誕生)、40億年前に地球に生命が誕生した。そして、100万年前に人類が誕生した。
その後、人類は宇宙探索を始め、1957年にはソ連が人工衛星の打ち上げに成功し、1961年にはユーリ・ガガーリンが宇宙船ボストークで人類が初めて有人宇宙飛行を成し遂げた。1965年にはアレクセイ・A・レオーノフが人類史上初の宇宙遊泳を行ない、1969年にアームストロング他が人類初の月面着陸を果たした。
そして、2020年代の目標は、月周辺の有人探査を実施し、無人で月周辺に移動させた小惑星の有人探査、月周辺の長期有人滞在ミッション、月表面の有人探査を行うことである。
こうした宇宙での活動には、宇宙服も非常に重要である。宇宙服には様々な用途と種類があるが、今回は、船外活動用宇宙服、宇宙船内服、さらに次世代宇宙服についてご紹介したい。
船外活動用宇宙服
船外活動用宇宙服とは、宇宙飛行士が宇宙空間で安全に生存・活動するために着用する、生命維持装置を備えた気密服のことである。国際宇宙ステーションの建設が進捗することに伴い、宇宙船やISS(International Space Station)の外に出て作業を実施する機会が多くなる。このような作業を「船外活動(Extravehicular Activity: EVA)」と呼びます。船外活動用宇宙服は、それだけで宇宙空間に漂う人間を守ってくれる、小型の宇宙船とも言える。
宇宙服には次のような役割がある。
・宇宙の真空状態、熱環境、宇宙塵などから身体を守る。
・太陽の光により120℃まで上がり、夜間の作業場所では-160℃まで下がる作業条件下でも、宇宙服内の温湿度を一定に保つ。
・酸素を供給する。
・呼吸によって生じる有害な二酸化炭素を除去する。
・他の宇宙飛行士や地上の管制官との音声交信を行う。
これらの役割を果すため、宇宙服図に示したのは上部胴体、下部胴体、グローブ、ヘルメット、冷却服、生命維持装置、通信装置などの部品から構成される。そして7時間以上にもおよぶことがある船外活動中に尿を排泄できるよう、おむつを使用する。
宇宙船内服について
まず、宇宙船内で着用する船内服(与圧服)について述べたい。こちらは飛行服の一種で、気圧が極端に低い上空(高高度)を通過するロケットによる打ち上げ時や還時に、乗員を保護するために用いられるものであり、気密性が高く、一定の圧力をかけることで減圧症を防ぐ宇宙服である。
気圧が極端に低くなると、たとえ酸素マスクをつけていても、肺が酸素を吸収するのに必要な圧力を得られず、呼吸が困難になってしまう。また減圧により、血液中に溶け込んだ窒素などが気泡と化してしまうこと(減圧症)も問題になる。
次に通常の服について述べたい。内容はワークシャツ、パンツ、Tシャツ、ショーツ等である。ただし、ISSで3人のメンバーが6か月間滞在するために十分な下着を用意することは不可能なため、下着をどれだけ長く着用できるかという問題がある。さらに、宇宙飛行士は、自分の体が微小重力で萎縮しないように、毎日かなりの時間を費やして運動をしなければならない。
なお、宇宙飛行士は3日ごとに新しいTシャツとショーツを受け取って、ワークシャツとパンツは、通常10日ごとに受け取る。
また、着用した衣類は宇宙ステーションの乗組員が持ち帰る服はほとんどない。最終的には宇宙ステーションからドッキング解除する前に補給車両に配置され、汚れた衣類やその他のゴミは、地球に大気圏再突入して燃え尽きることになる。
次世代宇宙服について
NASAは最先端の繊維と形状記憶合金コイルを研究し、新しい高度な材料を活用した新型の宇宙服xEMU(Exploration Extravehicular Mobility Unit)を開発した。そして、PGS(pressure garment system)を開発する。xEMU PGSの主な機能は、月と地球の月面空間や月面の厳しい環境から宇宙飛行士を保護することである。現在の宇宙服にはない惑星の表面で動作する探査モビリティ機能を備えている。なお、宇宙飛行士の身体的・精神的健康状態の正確な監視、身体的健康情報の伝達しセンサーを開発する。人間の皮膚や衣服に適合すべし軽量で快適で、柔軟で伸縮性のある装着可能な生物医学とひずみセンサーである。
なお、JAXAでも船外活動前の脱窒素作業が不要となる次世代先端宇宙服等を開発している。その他、アパレルブランドと協力し、上下分けて着ることができるフライトスーツや、取り外し可能なポケット付きで⾼いストレッチ性を備えたクライミング⾵パンツ、吸⽔速乾・抗菌防臭性を備えた和紙原料の⽷を⽤いたラガーシャツ、下着、ソックスなどを製作し、滞在期間を快適に過ごせる宇宙服を開発している。
宇宙世紀への期待
最後に、冒頭でもご紹介したが、人類の宇宙資源開発において2020年代は、月周辺の有人探査、無人で月周辺に移動させた小惑星の有人探査、月周辺の長期有人滞在ミッション、月表面の有人探査等が行われる。これらの挑戦で得た技術と経験は、今後の宇宙開発をさらに加速していくものになると考えられる。
さて、次回以降は、衛星画像のAI技術解析、宇宙ステーションの予知保全、惑星移住等について、順次ご紹介していきたい。
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