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眼科画像に基づく糖尿病のスクリーニング(2)

前回のBlogに引き続き、今回も眼科画像と機械学習を用いた糖尿病のスクリーニング方法についての技術的な考察についてのご紹介となるが、今回は特に深層学習にフォーカスを当ててご説明をしていきたい。

深層学習について

まず、深層学習が今クローズアップされている経緯から説明する。
人工知能はこれまで二回のブーム(1950年、1980年)と氷河期を経て、ビッグデータ時代の幕開けがきっかけとなり、現在は第三次AIブームが到来している。そして、2012年に開催された画像認識コンテスト「ILSVRC2010( The ImageNet Large Scale Visual Recognition Challenge)」において、トロント大学のhinton教授らが、深層学習を用いて画像識別精度を大幅に高く(75%→96%)して優勝したことにより、世界中の技術者が、深層学習を応用した研究開発を様々な業界向けに展開していったのである。それに伴い、深層学習のライブラリも多く羅列されていった。
次に、以下に代表的なライブラリを紹介しておく。また、実装作業においては、下記の手法を組み合わせて利用することが一般である。今回ご紹介しているスクリーニングシステムの例においても「TensorFlow」「Keras」の2つを採用している。

(1)TensorFlowとは、Googleが開発したオープンソースであり、対応OS:Linux、macOS、Windows、Android、iOS、対応プログラミング言語:Python、C、Java、Goと幅広く、複数CPU/GPUを搭載可能である。画像認識や自然言語処理などの各領域に応用可能である。
(2)Kerasとは、Googleが開発し言語はPythonであり、TensorFlowや他のディープラーニングのライブラリ上で動く作りになっており、より簡単に深層学習モデルを作ることができる。
(3)Pytorchは、Facebookが画開発し言語はPythonであり、自然言語処理や画像認識処理に利用されるディープラーニングフレームワークである。
(4)Caffeとは、カリフォルニア大学が開発し画像認識に特化したディープラーニングライブラリで、容易に素早くプロトタイプの作成が可能で、C++で書かれており、PythonとMatLabで動かすためのパッケージも存在する。

スクリーニングシステムの例についてのご紹介

上記でご説明した深層学習を利用したスクリーニングシステムの例についてご紹介したい。
まず、AIモデルの主なライブラリ構成は、TensorFlowとCaffeを組み合わせとなる。
次に、学習データセットとしては、8万4000枚の糖尿病眼底画像(眼底所見A1-2とB1-2)を利用した。

医療業界へのAI導入における今後の課題について

まず、深層学習は高いパフォーマンスを得られるが、従来の機械学習手法と較べて、大量の学習データが必要となる。そのため大量のデータの準備が必要になるが、ラベリングデータについては、少量で済み且つ高い精度のアウトプットが出せる「半教師あり学習」を利用することにより、学習データの準備を現実的なものにすることが可能である。それでも、大量のデータを扱うため、処理時間短縮のためには、現実的にはGPU(Graphics Processing Unit)を使うこととなる。
次に、深層学習のアルゴリズムが「ブラックボックス」であるため、薬事承認審査で認められることが難しい点である。こちらについては、申請から承認が下りるまでの期間の長さ等その他の課題もある。
その他課題としては、医療データが少ない診療科目へのAI導入についてである。こちらの場合は、転移学習(Transfer Learning)を用いて、データが取得できた診療科目のモデルを適応させる使い方が可能である。もしくは、「教師なし学習」の生成学習モデルの一手法としての敵対的生成モデル(Generative Adversarial Networks)を利用する手段もある。
ここまで技術的な事を多く説明したが、医療業界へのAI導入の目的は、機械学習モデルが重要なのではなく、医療現場にて臨床医をサポートし、医師がよりよい診療を考えられるようになることにより、患者がよりよい治療が受けられるようになることである。
最後に、機械学習や様々な技術を利用した眼科画像に基づく糖尿病のスクリーニングについて、改めてご紹介する。
こちらのスクリーニングシステムの例は、非侵襲的でかつ短時間のため、患者への負担が少なく、繰り返し検査を行うことができ、さらには、医師がよりよい再検査(精密検査)をすることができるようになると考えている。そして、より多くの患者を救う手助けができると信じている。

次回のBlogは、糖尿病性神経障害の進行度の評価について、ご紹介したい。

Blog投稿者

ストラクチュアルライン株式会社
李 徳衡

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