21 世紀に入って、モノづくり企業の生産現場では「労働力不足」、「グローバル市場における競争力確保」、「顧客要求品質の高度化」などへの対応が急務となっている。このような製造業の現場が抱える課題解決には、工場の生産ラインで行う「不良品と異物混入の検出」が有効で、これまで人の「目」でしか判断できなかったタスクを「自動化」できる可能性が広がっている。
「不良品と異物混入の検出」は、画像認識技術と機械学習を利用することで実現が可能となる。そして、生産ラインの故障予知とメンテナンスを自動化し、無人化生産を実現する事も可能である。
今回のBlogでは、「不良品と異物混入の検出」における基本技術となる「マシンビジョン」について説明し、「不良品検出」「異物混入検出」の手法についてご紹介していきたい。

マシンビジョン（Machine Vision）とは、産業（特に製造業）において、カメラなどを使って画像を取得し、取得した画像情報に基づいて機器を動作させる技術や手法のことである。そして、画像の中から検知したい箇所を見つけ出すための技術としては、テンプレートマッチング（Template matching）がよく用いられ、製造業に応用するのが盛んである。アプリケーションでは、2次元・可視光の一般的な撮影を使っているが、赤外線撮影、ラインスキャン撮影、3次元撮影、X線撮影などが使われることもある。照合アルゴリズムの類似度の計算手法では、SSD（Sum of Squared Difference）やNCC（Normalized Cross-Correlation）などが用いられる。

生産ラインにおける不良品検出では、主に部品や製品の表面に付着した異物や汚れ、傷、バリ、欠け、変形などの外観上の欠陥を確認し、良否判定を行う。
以下に具体的な不良品検出のケースを示す。
・医療品製造ラインにおける包装外観不良
・自動車部品の表面にできた傷や擦れや図面寸法との差
・電子デバイス業界の半導体パッケージ、コンデンサ、コプラナリティのばらつき、ピンやリードの曲がり
・織機ラインでの生地や織物などの糸を断ち切る異常などに関する不良品の検出
・金型内に残ったまま次の製品を成形すると筋状の凹凸が製品に残り
学習のためのデータについて補足をすると、テンプレートモデルの作成時に、良品データと不良品データ双方について十分な量を収集することができれば、それぞれを判定する”分類器”を用意し不良品を検出するが、不良品データを大量に収集する事が困難であれば、良品のみを学習し、それ以外を”異常検知”として検出するアルゴリズムを適用することもできる。
導入時としては、コストも考え、低スペックなハード（GPU不要）を使い、精度と速度の両立を実現することも可能である。

画像認識技術を活用した異物検査について、製品内部に混入した異物を判定する工程で、特に医薬品関係や食品関係では、安全意識が高まっていることから、需要が高まっている。
また、導入コストとしても、X線による探知や金属検知による検出より、画像認識技術を使った方が、導入コストを抑えることができる。
次に、学習用データについてだが、異物混入の種類は非常に多く、データが種類不特定で、十分なデータ量を収集する事が困難なため、異物混入ない良品データのみを学習しテンプレートモデルを作成する方法が有効である。良品データの用意方法としては、200万画素程度のカメラを使用し、パソコン（ローススペック可）にて、10枚前後の画像を準備すればよく、そのデータを学習させるだけで高精度に異物混入を検出することができる。

最後に、冒頭で製造業の課題として「労働力不足」、「グローバル市場における競争力確保」、「顧客要求品質の高度化」を挙げたが、製品の検査・検品作業をAIに置き換えることで作業品質の向上と人員不足の解消、尚且つ精度と速度の両立を実現することが可能となる。
実現方法としては、まず、より強力な技法として深層学習という手段もあるが、深層学習は大量のデータを用意する必要があり、且つ、コスト面においてもまだまだハードルが高い。
そのため、私は低スペックの光学カメラとパソコンを使い、ファイン変換とテンプレートマッチングのアルゴリズムを活用して、画像処理システムを導入する手法を推奨している。
次回のBlogでは、生産ラインにおける異常検知・予知保全へのより具体的なAI活用についてご紹介したい。